2010年6月7日月曜日

vol.251 志賀直哉再読、アゲハチョウ

 ツーリング・レポート「東海・旅の足跡」をお読みいただき、ありがとうございます。

 拙宅のバルコニーで、片方の羽が折れ曲がったアゲハチョウを見つけました。
 羽化に失敗したのか、それとも鳥などの敵に襲われたのだろうか。どうやら飛ぶことができないらしい。このままでは遅かれ早かれ、死んでしまうのではないかと思うと悲しくなった。
 「…死んだ蜂は雨樋を伝って地面に流し出された事であろう。足は縮めたまま、触角は顔へこびりついたまま、多分泥にまみれて何処かで凝然としている事だろう。」(志賀直哉「城の崎にて」)
 僕は羽の折れ曲がったアゲハチョウを見つけて、今から20年前以上に国語の授業で習った小説の一節を思い出していた。

 志賀直哉の文章といえば、「城の崎にて」などが教科書等で広く読まれているが、晩年のそれも素晴らしい。
 例を挙げると、「池の縁」「白い線」「八手の花」「ナイルの水の一滴」といった作品で、内容は主に身の回りの自然を観察したり、肉親との何気ないやりとりなどが描かれている。一見すると退屈で平凡な題材ながら、折にふれて読み返したくなるのだ。
 僕はいま、40歳。もしも志賀直哉のように長生きをしたならば(88歳)、彼のような好々爺になってみたいと思うのだ。

 「東海・旅の足跡」は東海地区で発売されている月刊誌『バイクガイド』に連載中のツーリング・レポートです。ご一読いただき、ご感想をお寄せいただければ幸いです。

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